常夏のクアラルンプールから

悪夢のようでした。昨日のできごとです。予想をはるかに超える大きさの直腸腫瘍。器具の不調や手術習慣の違いもありましたが、かなり無理をして引き受けてしまったことが、この試練を生んだと反省しています。7時間のバトルの末、手術を完遂しました。見苦しく泥臭い手術になりました。学会参加者は時間を過ぎても私の手術を見守ってくれました。会場から中継された音声に、拍手の音を聞いたとき、涙が出そうになりました。マレーシア国立大学病院でのライブ手術。一生忘れないと思います。

一夜明けた今日、鉛のような足を引きずって学会会場に行きました。まだ疲労の色を濃く残した私に、多くのひとが駆け寄ってきて握手を求めてくれました。「きみの辛抱強さに感服したよ」「あんな難しい手術をよくやり遂げたね」。そして主治医のアーマッドが私を待ち受けていました。「患者さんは今朝すごく元気だったよ。そしてきみに感謝の意を伝えて欲しいと言っていたよ。」彼と歓喜の握手をしながら、試練が大きければ大きいほど、あとでやってくる喜びも大きいことを感じました。「エイジにやっと笑顔が戻ってよかった」アーマッドも嬉しそうでした。「きみが笑顔になると僕もうれしいよ」という私たちのプリンシプルを思い出しました。

これからさらに二日間、クアラルンプールで講演を行います。世界中どこへ行っても私たちのプリンシプルを忘れずにひとびとと接し続けたいと思います。

2014年3月7日 院長金平 記

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常夏のクアラルンプールから への3件のコメント

  1. 老婆心 より:

    金平先生、

    マレーシアでのライブ手術、本当にお疲れ様でした!!悔恨と歓喜の一日だったのでしょう。先生の手術着の折じわの多さに、手術環境の相違の一端を垣間見た気がいたします。
    終わりよければすべてよし。患者さんの喜びが何よりの報酬でしたね。そしてさらにより多くの医師たちが先生の技と哲学、熱い思いを習得されてることを。。。
    東京は今日小雪がちらつきました。束の間の常夏のクアラルンプールの快い暑さをエンジョイしてください。。

    老婆心。

    • Life lovers より:

      老婆心さん いつも応援ありがとうございます。手術を行いながら、TBSの某有名ディレクターさんからもらったニックネーム「ミスター安請け合い」を思い出していました。風に立つライオンの主人公のニックネームです。あんなに素晴らしい人にはなれませんが、似たような行動に泣き笑いしていました。その後の講演ふたつで、名誉挽回できたと思っています。マレーシアでの講演で何度も笑いを取れたことで、いつもの自分を取り戻しました。ひとを笑わせることが私の幸せだとしみじみ感じています。
      高層ビルとパームトゥリーを後にして、さきほど空港に到着しました。今朝マレーシア航空機不明のニュースが入ってきました。無事を祈るしかありません。もうすぐ常夏の国から寒波居座る東京に向けて搭乗します。
      クアラルンプール空港にて

      • 老婆心 より:

        金平先生、
        ”ミスター安請け合い”、いいじゃないですか!!だれもが躊躇する手術。しかも慣れない異国での7時間に及ぶライブ手術。こんな難しい仕事は熟慮すればなかなか引き受けられなかったでしょう。時にはPositive な軽率さも大切です。その後の講演も大成功の由、後はご無事に帰国されるのを祈るばかりです。眼帯もとれたようでよかったですね。
        老婆心。

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