私の部屋には45年ほど前に母が両親に買ってもらい、その後私が3歳から弾いている、今は製造されていない象牙の銀盤のピアノがあります。
ピアノは、木材や羊毛など天然素材の精密な備品が多く使われ、暑さや寒さ、そして湿度にとても敏感な楽器です。またピアノの弦には、常に1本あたり90㎏、1台20tもの強い力がかかっているため、時間と共に少しずつ音が下がるので調整する必要があります。それが調律です。
わたしも春と秋に調律しています。出費はかさみますが・・・、調律した後のピアノの音は格別。私の狭い部屋でも丸い透明感のある音の粒がハーモニーを奏で広がります。
「ハーモニー:Harmony」とは英語で意味は和音、厳密には和音の進行と各声部の配置や進行の組み合わせをいいます。というと、????と頭の中がたくさんの?マークでいっぱいになるかもしれませんが、子供のころ音楽の授業の前に「気を付け、礼、なおれ」を「ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪」と先生がピアノで弾いてくれたあの音、といえば「あ~~」となる人も多いと思います。簡単にいうと、それがハーモニーです。
「ハーモニー」の語源はギリシャ語で「ハルモニア:Harmonia」といい、一致、連結を意味します。
この病院にも「ハルモニア」があります。医師、看護師、検査技師、薬剤師、栄養士、調理師、事務、清掃してくれる人、洗濯や食材を運ぶ業者さん、多種類の薬を紹介してくれるメーカーさん、機材点検をしてくれる人、そして患者さんと患者さんの家族などなど、たくさんの人とつながり成り立っています。
楽器や歌声で違う音を重ね合わせ、響きあって、心地よいハーモニーが奏でられたとき、奏者や聴衆は幸福感や満足感を得て、ときに感動や癒しを受けます。痛みや苦しさを感じ患者さんが来院される医療の現場にもハルモニアが流れ、よりよい調和が毎日奏でていけたらいいなと思います。
(診療補助課:竹内)